ハワイには「地面師たち」はいないのか?

日本ではNetflix の「地面師たち」が大人気です。現在私は司法書士とワンストップで事務所運営を行っていることから、地面師の話は昔から聞いていました。司法書士や弁護士が不動産売買の立ち合いをして売主の本人確認をしたにもかかわらず、相手が地面師だった場合などは立ち会った司法書士が損害賠償請求を受けるケースは多いという話です(この場合、原則として司法書士損害賠償保険で補償されます)。だまされた側は地面師を訴えてもすでにお金が消えているケースが多いため、仲介者や司法書士、偽造印鑑証明を見逃した市役所などに損害賠償請求するしかないからです。

ドラマでは地面師チームの具体的な役割分担などがリアル(というかドラマティック)に描かれており、不動産や法律関係に縁のない人たちもどんどん引き込まれていったに違いありません。(銀座のお姉さまたちはほとんど見ているという話です)

日本では権利証の偽造防止などから2004年に権利証が廃止され目隠しシール付きの登記識別情報通知書となったため「権利証」の偽造は無くなったようですが、ドラマに出てくるように印鑑証明や免許証、パスポートの偽造はまだまだある(ホント?)ようで、本人しか知らないような情報を覚えさせられた偽者とセットで騙すという仕組みです。

さて、ハワイではこのような詐欺事件はないのでしょうか?ないことはないと思いますが、日本と違いエスクローという第三者預託会社が間に入ることにより地面師詐欺を防ぐ機能を果たしています。

日本では「お金を払う」と「売買契約書や登記申請書にサインする」を同時に行うため、同時決済のように見えますが、そののちに司法書士が法務局に持ち込むため登記完了までに数日間の時差が生じます。つまり本当の意味での同時決済になっていないので、法務局が却下する前に犯人は国外に送金して逃亡することができるのです。エスクロー決済においては、エスクローは買主からお金を預かり、売主から契約書(売り渡し証書)を預かり、権利移転時に同時決済するため時差は生じません。エスクローは政府機関とやり取りして調査する権限も持っているためタイトルサーチを徹底して行うことができるのと、売買当事者はタイトル保険(名義変更でトラブったときのための賠償保険)に加入しているため、いざとなったら保険で賠償されることになっていることから、日本に比べて安心して決済できるのです。

大手も巨額の被害を受けているにも関わらず日本の不動産登記にエスクローが導入される気配がありませんが、エスクロー制度を導入してもこれらを取り締まることが難しいからではないでしょうか?司法書士法も改正しなければならないですし、預かったお金を横領するなど別な被害も出てくる可能性もありますし。国によって登記制度や相続制度が異なります。国際投資を行う際には制度を理解して、信頼できる専門家に任せることが大事だと思います。

 

文責:内藤

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