ハワイ資産が凍結されないために
ハワイ不動産を購入するときに「プロベート対策」は欠かせません。という話はすでにご存じだと思います。が今回はそれだけでは足りませんというお話です。
日本と異なり、米国では円満な相続の場合でも「相続開始とともに資産が凍結」され、プロベートという相続手続きが始まります。プロベートでは相続財産の管財人が中心となって相続人の確定~債務の弁済や納税を行い、残りを相続人に分配するという手続きです。日本でいう会社清算の手続きに似ています。
日本と違い戸籍が存在しない米国では婚姻証明や出生証明から相続人を特定しなければなりません。中には「遺言で私がもらうことになっている」という人が数多く出てきて真偽のほどを一つ一つ検証なければならないケースもあり、最低でも1年半はかかるといわれています。マリリンモンローの相続ではプロベートは40年もかかったといわれています。
このプロベートを回避(合法的)する方法としてトラスト(信託)、ジョイントテナンシー(合有名義)、TODD(死因贈与仮登記)などがあります。ここまでは準備している方がほとんどだと思います。
しかし、高齢化が進む現在、相続開始した後のプロベート対策だけでは不十分です。人生100年時代に備えるという意味でも「認知症」対策のほうがむしろ重要となりつつあります。日本では家族信託があまり定着しておらず認知症対策としては「任意後見人」が知られていますが、米国ではトラストがプロベート対策と認知症対策の両方に効果があるためトラスト名義に変更していざという時に備えている場合が多いのです。
しかし日本人がハワイに一つだけコンドミニアムを有している場合などはTODDで済ませている場合が多いので、その時はpower of attorny(事務委託の委任状)に「自分が認知症になったときは○○へ委任する」と明記して資産が凍結されないよう準備する必要があります。
この委任状には、委任する財産の範囲や家族の判断で認知症か決定するのか公的機関での判断に限定するのかなど細かく決めることがあります。家族の判断の場合など、うっかり夫婦喧嘩してしまうと「あなたはもう認知症ね」と財産名義を変更されてしまう場合もあるかもしれないので、個別の事情を現地の弁護士に話してご自分のフィットする委任契約書を作成しておく必要があります。お問い合わせいただければハワイの弁護士とともに対応策をアドバイスさせていただきます。
(税理士 内藤)