ハワイ法人で不動産を所有している場合の出口戦略
ハワイ不動産を購入する場合、プロベート対策でハワイ法人名義を検討する場合があります。たしかにハワイ法人で取得すればそのオーナーが亡くなっても法人は存続するため不動産名義は変わりません。しかし日本人オーナーがハワイ法人の株式を所有しているため、ハワイ法人の株式がプロベート対象となってしまいます。
先日も、十数年まえに子供たちのためにハワイ法人を設立し、その法人に貸付を行いハワイ不動産を購入した方から「そろそろ相続対策を考えなければならないがどうすればいいのでしょう?」という相談を受けました。
「なぜハワイ法人で購入したのですか?」と質問したら「誰かにそうアドバイスをうけたので」という回答でした。多分税務上の問題ではなく「損害賠償リスクのヘッジ」ではないのかと思います。その物件で管理不足などのミスによりテナントから損害賠償を受ける場合、日本法人ですと日本側に訴訟リスクを持ち込むことになります。ハワイ法人であればその範囲での責任で収まります。
「売却時に外国法人に適用されるFirpta,Harpta(源泉税)がないからハワイ法人にするんだ」という声もよく聞きますが、源泉税はあくまで税金の仮納付であり、申告すれば本来払うべき税金との差額は還付されるのでこれは決め手となりません。
「為替差損益の影響を回避できるではないか」という声に対してもその法人を解散して日本の株主に配当や分配したときには為替差損益の影響を受けてしまうのでこれも決め手となりません。
ハワイ法人で運用するのであれば、日本法人の子会社として設立すればプロベートの回避も可能ですし、受取時の配当課税も回避できます。
今回は取得から十数年経過しており、購入時のレートも1ドル80円ほどであるためまずは売却してハワイで法人税を納め、貸しているお金を日本で回収し、相続税の納税資金として準備するという結論に達しました。日本の相続税は金銭一括納付が原則ですので相続開始してからあわててハワイ不動産売却手続きをすると期限内納付が難しい場合もあるからです。
文責:税理士 内藤 克