ハワイ不動産は配偶者に相続させないほうがいい?
ハワイ不動産をお持ちの方はプロベート対策としてトラストやジョイントテナンシー、TODDなど工夫されていると思います。そして承継させる先を配偶者にしている方がほとんどかと思います。
日本でも二次相続を考えて子供たちに遺言を書くケースもふえた一方、人生100年時代の到来で配偶者の老後資金のために財産を残したいという方もおり、一概にどちらがいいとは言えません。
先日あったご相談は二次相続の話ではなく「ハワイ不動産を配偶者へ」というトラストにより日本の相続税が増えてしまったという例でした。
日本人がハワイの不動産を所有していて相続が発生すると、米国での遺産税は非居住者ということで基礎控除はたったの6万ドル(約900万円)です。これではほとんどの方が課税されてしまいます。そこで多くの方は日米相続税条約に基づいて米国居住者の基礎控除1361万ドル(20億円)の枠を按分して適用します(2024年度の場合)。なんだ20億円までかからないのかと安心してはいけません。その20億円を日米の資産残高に応じて按分しなければならないのです。日本の財産が圧倒的に多いと按分後の米国で基礎控除が激減してしまうのです。例えば日本:米国=9:1であればハワイに2億円を超える財産があれば米国遺産税の対象となってしまいます。
でも、ハワイで遺産税を払ったら日本の相続税の申告で「外国税額控除」を受ければいいさとお思いかもしれませんが、話はそう簡単ではありません。配偶者が相続する場合、「配偶者の税額軽減」により法定相続分までは相続税がかからないため、配偶者がハワイ不動産を取得して米国で遺産税をはらっても外国税額控除前の段階で相続税ゼロとなっており、ハワイで払った遺産税を日本では控除できないのです(かなりマニアックなお話です)。
子供たちがハワイ不動産を相続し、その分日本の財産を配偶者に寄せれば日本の相続税から少しでも控除できたのです。
このケース、トラストの撤回や変更(できるとしても期限がある)で乗り切ろうとしていましたが、相続が起きてからでは難しいことだらけであきらめるしかありませんでした。
ハワイでトラストを設立するときにそこまでのアドバイスを求めることも難しければ、日本の税理士さんにそこまで求めることも難しいです。国際相続ではこのようなお話は山ほどあるのです。
文責:内藤